どうせもう まともじゃ居られないんだから





クソ眠い。



前の店でお客さんだったおじさんにエンしてもらってから、ああわたしまだまだ全然知らない人や好きでもない人とのスキンシップに抵抗ないんだなと改めて思ったんだけど、その時から多分また元に戻るだろうなという予感はしてた。



一回出て行った身ですので、勿論実家には居場所なんてなくて。家族の当たりがどうこうとかそういう話じゃなくて、家族は当たり前の様に優しく接してくれるし全然嫌な感じ出されたりとかもないんだけど、多分わたしが勝手にそう思っちゃってるだけ。お金の話が話題に上がるとウワーごめんねさっさと出て行って自立するわぁぁ………って思いながら小さくなる。心臓をガシッと鷲掴みにしてゆらゆら揺さぶられている感じ。うまく前が見れなくなるというか。とにかくしんどい。



お母さんの家にいても自分の不甲斐なさ、要領の悪さに押し潰されそうになる。一人になりたいわけじゃないけど、一人で生きていきたい。自立した人間になりたい。どういう職業に就きたいとか店を開きたいとかビッグになりたいとか金持ちになりたいとか有名になりたいとか、そういう誰もが抱くような夢を抱く前に、わたしはちゃんとした人間になりたい。当たり前のことをしっかりできる人間になりたい。自分の心の弱さとか全部とっぱらって、誰にも迷惑をかけずに生きていきたい。もし誰かが困ってたらすぐに助けてあげられる様な、そんな余裕のある人間になりたい。だからわたしは一人で生きていくためにちゃんとお金を稼がないといけない。誰かのためじゃなくてまずは自分のために。自分が救われるために。生きていてもいいんだとちゃんと思えるように。ここまで追い詰められて、(追い詰めたのは自分だけど)自傷行為やODを繰り返してなお死ねない、死ぬ勇気すらないっていうのは、結局助かりたいんだと思う。幸せになりたいんだと思う。幸せになんてなれなくても、幸せになるために足掻くぐらい誰も責めやしないよね。許してくれるよね。





隣の区の店に移って、待遇も働き方も待機も全然前の店とは違うし、名前も変えたし、そこでまた一からと思ったのだけど、前の店で本指だった客がわたしのことを見つけて追いかけてきたみたいで、昨日初出勤だったのに、店に来た。



ドアの後ろに隠れてたんだけど、顔を見た時に血の気が引いた。え、なんで。こんな早くバレたの。と思った。もしかしたら前の店の客がわたしに気づいて来るかもしれないとはおもっていたんだけど、こんな早く見つかるとは思ってなかったからびっくりした。



いきなり辞めちゃったからびっくりしたよって言われた。え、なんで、え、え、としか言えなかった。気持ち悪い顔だ。怖い。怖かった。



前の店を辞めるに当たって、客ともLINEを交換したりしてたから作り直したんだけど、LINEも変えちゃったでしょ?また交換しようよってスマホを持たされて、無理やり交換させられた。せっかくLINE変えたのに。やだ。やだ。やだ。交換したくなかった。わたし友達にも追加してないしLINEも返してないけど。



会いたかったって言われた。わたしは全然会いたくなかったよと思った。やっぱりかわいいって言われた。頭おかしいんじゃないのと思った。相談してくれればよかったのに、と言われた。なんでおまえに相談しなきゃいけないんだと思った。おまえはわたしの何なんだよと思った。会いにきたの嫌だった?って聞かれた。嫌だよ。ていうか嫌じゃなかったら、また会いたいと思っていたら、何も言わずLINE変えたりしないでしょ。なんでわかんないのかな。


家の場所を詳しく聞かれたから誤魔化してたら、別にストーカーとかしないから、俺そんなことする奴じゃないって知ってるでしょ?って言われたんだけど、知らねえし。ほぼストーカーみたいなもんだろと思った。ねえ怖い。ほんとに怖い。何なのほんとに。



ほっぺにされるキスも、繋がってるときにかわいい、すきだよという囁きも、何もかも気持ち悪くて、涙が止まらなかった。痛かった。たくさん突かれるのも指で奥をがしがしやられるのも痛かった。全然気持ちよくないから。感度よくなったんじゃない?と言われた。おまえとする時に気持ちいいなんて思ったこと一度もないんだけど。辞めてくれ。やめてほんとにやめて。気持ち悪い、気持ち悪くてゲロ吐きそうだった。たくさん突きながらデートしようってずっと言ってきた。店の外で会って、別に変なことするわけじゃなくて、お店でごはん食べるだけだからって言われた。変なことしてるのに、いま変なことしてるのに。お金も払うからって言われた。店にも取られないしそっちの方がわたしの助けになるでしょって言われた。余計なお世話なんだけど。お前から貰う金なんて全然いらないんだけど。ずっと頭の中で好きな人の名前を呟いてた。なんで、なんで、なんで、わたしが可愛いとか好きだって言われたいのはきみだけなのに。なんで、なんで、ああ終わったらまだ起きてる?って連絡してみようかな。助けてくれるかな。抱きしめてくれるかな。って考えながら、いっぱい突かれながら泣いてた。涙が止まらなかった。もうダメだこれどうしたら止まるんだろうと思うほど止まらなかった。二の腕を強く掴んだけど辞めてくれなかった。辞めてとも言えなかった。怖かった。何回も好きな人の名前を呟いてたけど、わたしを上から見下ろしてくるその顔が一瞬きみに見えて、ああ、きみもこいつと何にも変わらないのかもしれない、一緒なのかもしれないって思ったら意識が遠のいていくような気がした。そうだね、そうだなあ。わたしが怖いって思った時に助けてほしいと思うのは咄嗟にきみなんだけど、そんなきみはわたしのことなんてこれっぽっちも想ってなくて、こうやって自分の性欲だけをぶつけてきてるだけなんだな、一緒なのかもしれないな、と思ったら悲しくなった。もう何も要らないな、と思った。わたしもきみのこと不安の捌け口にしていただけだし、きみもわたしのこと、都合のいい女としか思ってなかったって、それだけのことだった。



どうこうしようと思ってるわけじゃないけど、別に前の店の客にまた別の店で働いてるってバレたっていいんだけど、わたしは絶対おまえらのことを、好きになることは無いから勘違いしないでほしい。追いかけてきても絶対に無理だから、口説かないでほしい。黙ってほしい。ほんとに、無理だから。ほんとに気持ち悪いし怖いだけだから。なんでデートしなきゃいけないの?は?意味わかんない。無理だから。しにたい。会いたい。会いたい。会いたい。わたしが向けている好意だって気持ち悪いものなのかもしれない。怖い。ああもういいや。もうきみの顔も思い出せない。気持ち悪い、もう全部気持ち悪い。きみのことすら気持ち悪くなってきた。一緒だ全部。みんな一緒だ。違ったね。違ったよ。